ACU-T:3300 熱交換器部品のモデリング

このチュートリアルでは、HyperMesh CFDを使用した熱交換器部品のモデリングの手順を説明します。このチュートリアルを開始する前に、入門チュートリアルであるACU-T:1000 ユーザーインターフェースをすでに完了している必要があります。また、HyperMesh CFDAcuSolveの基本を理解しているものとします。このシミュレーションを実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperMesh CFDおよびAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを開始するには、本チュートリアルで使用されるファイルを作業ディレクトリにコピーしてください。
注: このチュートリアルでは、ジオメトリのクリーンアップやメッシュの設定に関する手順は説明していません。

問題の説明

熱交換器は、温度の異なる2つの流体間の熱交換を容易に行うために使用される機器です。通常の熱交換器には直交流と管状流という2つの別々の流れがあります。温度に応じて、流体間を隔てるソリッドを通って、熱は流体間を流れることができます。熱交換器は多数の薄板やパイプを含む非常に複雑な形状をしているので、システムレベルのシミュレーションの実行中に実際の熱交換器をモデル化するのは現実的ではありません。そうしたシナリオでは、実際の熱交換器のモデリングではなく、直交流に対する熱交換器の影響のみを考慮する簡略化されたアプローチを採用できます。このためには、AcuSolveで提供される熱交換器部品を使用します。

この熱交換器部品は直交流に対して次の2つの影響を与えます。

  1. ユーザーが入力する摩擦パラメータに基づいて計算される圧力低下。
  2. 冷却液の熱伝達パラメータに基づく加熱と徐熱。
このチュートリアルで扱う問題は、下の図に示しています。この問題には、熱交換器部品のボリュームを持ち、厚みが‘t’の円筒状の管流路があります。入口から空気が0.1m/secの速度で管に流入し、熱交換器のボリュームを経て出口から流出します。空気は熱交換器部品を通って流れるので、冷却液から熱が追加され、冷却液の徐熱合計は200Wになります。


図 1.

HyperMesh CFDの起動とHyperMeshデータベースのオープン

  1. WindowsのスタートメニューからStart > Altair <version> > HyperMesh CFDをクリックしてHyperMesh CFDを起動します。
  2. ホームツールのファイルツールグループからOpen Modelツールをクリックします。


    図 2.
    Open Fileダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T3300_HeatExchanger.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
  5. 名前をHeatExchangerとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてHeatExchangerと入力するか、都合のいい名前を選択して入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

形状の検証

Validateツールは、モデル全体をスキャンし、サーフェスおよびソリッド上でチェックを実行して、形状に不具合(フリーエッジ、閉じたシェル、交差、重複、スライバーなど)があればフラグ付けします。

シミュレーションの物理パートに集中するために、このチュートリアルの入力ファイルにはすでに検証済みの形状が含まれています。形状リボンのValidateアイコンの左上隅に青色のチェックマークが表示されていることを確認します。これは、形状が有効で、フロー設定に進めることを示しています。


図 3.

流れのセットアップ

一般的なシミュレーションパラメータの設定

  1. 流れリボンから Physicsツールをクリックします。


    図 4.
    Setupダイアログが開きます。
  2. Physics modelsの設定で
    1. Time marchingがSteadyに設定されていることを確認します。
    2. Turbulence modelにSpalart-Allmarasを選択します。
    3. Heat transferチェックボックスを選択します。


    図 5.
  3. ダイアログを閉じてモデルを保存します。

材料プロパティの割り当て

  1. 流れリボンから 材料ツールをクリックします。


    図 6.
  2. 3つのボリュームすべてにAirの材料素材が割り当てられていることを確認してください。
  3. ガイドバーをクリックしてツールを終了します。

熱交換器コンポーネントの定義

  1. 流れリボンで、Domainツールセットの横の矢印をクリックし、Heat Exchangerを選択します。


    図 7.
  2. 中央のソリッドを熱交換器部品ボリュームとして選択します。


    図 8.
  3. ガイドバーで、Inletをクリックして、下に示すフェイスを熱交換器部品の入口として選択します。


    図 9.
  4. マクロダイアログで、以下のパラメータを入力します。


    図 10.


    図 11.
  5. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  6. モデルを保存します。

流れ境界条件の定義

  1. 流れリボンから Constantツールをクリックします。


    図 12.
  2. 以下に示す入口のサーフェスをクリックします。


    図 13.
  3. マクロダイアログの、MomentumとTurbulenceタブで以下の値を入力します。


    図 14.


    図 15.
  4. ガイドバーで、をクリックしてコマンドを実行し、ツールを終了します。
  5. Outletツールをクリックします。


    図 16.
  6. 下図でハイライトされている面を選択し、ガイドバーをクリックします。


    図 17.
  7. モデルを保存します。

メッシュの生成

ソルバーの設定に焦点を当てるために、ここでは、すでに定義されているメッシュの設定を使用します。
  1. メッシュリボンから Volumeツールをクリックします。


    図 18.
  2. Meshing Operationsダイアログで、Mesh growth rate tを1.1に設定します(まだ設定されていない場合)。


    図 19.
  3. Meshをクリックします。
    Run Statusダイアログが開きます。解析が実行すると、ステータスが更新され、ダイアログが閉じます。
    ヒント: メッシュジョブを右クリックし、View log fileを選択してメッシングプロセスの概要を表示します。
  4. モデルを保存します。

AcuSolveの実行

  1. ソリューションリボンから 実行ツールをクリックします。


    図 20.
    Launch AcuSolveダイアログが開きます。
  2. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  3. オプション: プロセッサーの数を、環境に応じて4または8に設定します。
  4. 他のオプションはデフォルト設定のままにし、RunをクリックしてAcuSolveを起動します。


    図 21.

Plotツールでのポスト処理

  1. Run Statusダイアログで、AcuSolve実行を右クリックします。


    図 22.
  2. Plot time historyを選択し、残差指標と時間増分指標をプロットします。


    図 23.
  3. をクリックして、新しいプロットを作成します。
  4. ModelパネルでUser Definedを右クリックし、ユーザー定義関数を作成します。
  5. DataツリーでHeat Exchanger Component Outputを展開し、coolant temperatureを選択します。
  6. Name欄にdTと入力します。
  7. Value欄にvalue=と入力します。
  8. PartsでHX componentを選択し、をクリックして以下のように値の一部として欄を挿入します。


    図 24.
  9. ユーザー定義関数値の最後に-と入力します。
  10. Dataツリーでair temperatureを選択し、HX componentを選択してをクリックし、値の一部として欄を挿入します。
  11. をクリックし、ユーザー定義関数を追加します。


    図 25.
  12. x axisをクリックし、Time Stepsに切り替えます。


    図 26.

    上記プロットで示したとおり、温度上昇は43.3Kです。

要約

このチュートリアルでは、HyperMesh CFDを使用して、熱交換器コンポーネントを扱うシミュレーションを設定し、解析する方法を知ることができました。まず、HyperMeshの入力ファイル(形状を含む)を開き、次にシミュレーションパラメータ、熱交換器コンポーネント、流れ境界条件を定義しました。解析を計算した後、熱交換器ボリューム全体の温度上昇のプロットを作成するために、Plot Managerでユーザー関数を定義しました。