ACU-T:6106 AcuSolve - EDEM 質量変換による双方向連成

前提条件

このチュートリアルでは、質量変換によるAcuSolve-EDEMの基本の双方向連成のシミュレーションを設定して実行するワークフローを紹介します。このチュートリアルを開始する前に、入門チュートリアルであるACU-T:1000 ユーザーインターフェースおよびACU-T:6100 Altair EDEMを使用した風力選別機での粒子分離をすでに完了している必要があります。また、HyperMesh CFDAcuSolveEDEMの基本を理解しているものとします。このシミュレーションを実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperMesh CFDAcuSolve、およびEDEMにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを開始するには、本チュートリアルで使用されるファイルを作業ディレクトリにコピーしてください。

問題の説明

スプレーコーティング更新物理モデルでは、‘スプレー’粒子が固体粒子に接触したときにその質量と体積が固体粒子に移るコーティングプロセスをシミュレートできます。このチュートリアルでは、タブレットのコーティングプロセスがシミュレートされます。ここで、スプレー粒子はタブレットの列にスプレーされます。スプレー粒子はEDEMで固体粒子としてモデル化され、水のプロパティが設定されます。スプレー粒子がタブレットに接触すると、スプレー粒子の体積はタブレットに移され、‘Volume Added’と呼ばれるカスタムプロパティに登録されます。このカスタムプロパティは、タブレットが受け取ったコーティングを数値化するためのメトリックとして使用できます。


図 1.
一般的なタブレットコーターで、コーティングプロセス中に熱風が噴射されます。これにより、この溶媒が蒸発し、コーティングの固形分がタブレットのサーフェスに沈着します。AcuSolveでスプレーコーティングモデルを熱および質量の伝達モデルと連成することで、乾燥プロセスもシミュレートできます。このチュートリアルで、空気の初期温度は363Kに設定され、壁は断熱壁と見なされます。タブレット粒子は初期温度350Kで作成されます。スプレー粒子は、シミュレーションの最初の0.25秒の間に噴射され、コーティングは放置されて蒸発します。Volume Added(コーティング体積)に加え、各粒子の蒸発速度も監視できます。


図 2.

パート1 - EDEMシミュレーション

WindowsのスタートメニューからStart > Altair > EDEM をクリックしてEDEMを起動します。

EDEMの入力デックを開く

  1. メニューバーFile > Openをクリックします。
  2. ダイアログで、問題用ディレクトリに移動し、tablet.demファイルを開きます。
    ジオメトリと材料が読み込まれます。


    図 3.

バルク材料と粒子形状の確認

  1. Creatorツリーで右クリックし、Expand Allを選択します。
  2. Bulk Materialの下で、sprayをクリックし、次のようにプロパティが設定されていることを確認します。


    図 4.
  3. sprayの下のPropertiesをクリックします。particle radiuseが0.0001mに設定されていることを確認します。
  4. tabletバルク材料をクリックし、次のようにプロパティが設定されていることを確認します。


    図 5.
  5. tabletの下のPropertiesをクリックし、tablet shapeを確認します。


    図 6.

    タブレットは4つの異なる形状で構成されており、全体の寸法は0.004m×0.002m×0.002mです。図中の座標の桁はデータベース上のものと若干異なっています。

物理モデルの設定

  1. Creatorツリーで、Physicsをクリックします。
  2. InteractionをParticle to Particleに設定し、Edit Contact Chainをクリックします。


    図 7.
  3. ダイアログで、Spray Coatingモデルのチェックボックスをオンにします。下の図に示すようにBaseモデルとFrictionモデルを設定し、OKをクリックします。


    図 8.
  4. Creatorツリーで、Spray Coatingを選択してをクリックします。


    図 9.
  5. Spray Coating Model Configurationダイアログで、をクリックして材料のリストからsprayを選択し、 OKをクリックします。


    図 10.
  6. Creatorツリーで、InteractionをParticle to Geometryに変更し、Edit Contact Chainをクリックします。
  7. ダイアログで、上と同じパラメータを設定して、OKをクリックします。


    図 11.
  8. Creatorツリーで、Spray Coatingを選択してをクリックします。
  9. Spray Coating Model Configurationダイアログで、をクリックして材料のリストからsprayを選択し、 OKをクリックします。
  10. Creatorツリーで、InteractionをParticle Body Forceに変更し、Edit Contact Chainをクリックします。
    注: この簡単な例では、タブレット間の接触およびタブレットと形状の接触がないように、タブレット粒子が作成されます。したがって、計算時間の節約のため、接触モデルはオフにします。スプレーとタブレット間の接触は依然として有効で、スプレーコーティング物理モデルによって処理されます。
  11. ダイアログで、Temperature UpdateおよびSpray Coating Updateのチェックボックスをオンにして、OKをクリックします。


    図 12.
  12. Creatorツリーで、Temperature Updateを選択してをクリックします。


    図 13.
  13. タブレットとスプレーのspecific heat capacityをそれぞれ1200J/kg-Kと4000J/kg-Kに設定して、OKをクリックします。
  14. モデルを保存します。

形状とファクトリの定義

  1. Geometriesの下で、boxをクリックし、TypeがVirtualに設定されていることを確認します。
  2. boxを右クリックし、Add Factoryを選択します。
  3. New Factory 1を右クリックし、Change Factory Typeを選択します。
  4. Factory Typeがstaticに設定されていることを確認して、下図に示すように粒子の生成パラメータを設定します。Material/Meta-Particleがtabletに設定されていることを確認します。


    図 14.
  5. Parametersの下で、Positionオプションをcubicに設定してをクリックします。


    図 15.
  6. ダイアログで、下の図に示すように位置パラメータを入力し、OKをクリックします。
    これにより、y軸に沿って均等な間隔で並び、ボックスの中央に配置されているタブレット粒子の行が作成されます。


    図 16.
  7. 同様に、Temperature設定の横のをクリックし、particle temperatureを350Kに設定して、OKをクリックします。
  8. Geometriesの下で、sprayをクリックし、TypeをVirtualに変更します。
  9. sprayを右クリックし、Add Factoryを選択します。
  10. 下図に示すように粒子の生成パラメータを設定します。Materialをsprayに設定します。


    図 17.
  11. Parametersの下で、Velocityオプションをsprayに設定してをクリックします。
  12. ダイアログで、下の図に示すようにspray velocityのパラメータを設定し、OKをクリックします。


    図 18.
  13. 同様に、Temperature設定の横のをクリックし、particle temperatureを350Kに設定して、OKをクリックします。
  14. モデルを保存します。

シミュレーション設定の定義

  1. 左上隅のをクリックして、EDEMのSimulatorタブに移動します。
  2. Simulator Settingsタブで、Time Integration schemeをEulerに設定し、Auto Time Stepチェックボックスを無効にします。
  3. Fixed Time Stepを1e-5sに設定します。
    注: 一般的に、time step sizeには、DEMシミュレーションの安定性を確保するために、Rayleigh Time Stepの20~40%の値が推奨されます。
  4. Total Timeを0.5sに設定し、Target Save Intervalを0.01sに設定します。
  5. Cell Sizeを50Rminに設定します。
  6. Selected EngineをCPU Solverに設定し、可用性に基づいてNumber of CPU Coresを設定します。


    図 19.
  7. シミュレーション設定の定義が完了したら、モデルを保存します。

パート2 - AcuSolveシミュレーション

HyperMesh CFDの起動とHyperMeshデータベースのオープン

  1. WindowsのスタートメニューからStart > Altair <version> > HyperMesh CFDをクリックしてHyperMesh CFDを起動します。
  2. ホームツールのファイルツールグループから、Open Modelツールをクリックします。


    図 20.
    Open Fileダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルACU-T6106_tablet.hmを選択してOpenをクリックします。

形状の検証

Validateツールは、モデル全体をスキャンし、サーフェスおよびソリッド上でチェックを実行して、形状に不具合(フリーエッジ、閉じたシェル、交差、重複、スライバーなど)があればフラグ付けします。

シミュレーションの物理パートに集中するために、このチュートリアルの入力ファイルにはすでに検証済みの形状が含まれています。形状リボンのValidateアイコンの左上隅に青色のチェックマークが表示されていることを確認します。これは、形状が有効で、フロー設定に進めることを示しています。


図 21.

流れのセットアップ

一般的なシミュレーションパラメータの設定

  1. 流れリボンから Physicsツールをクリックします。


    図 22.
    Setupダイアログが開きます。
  2. Physics modelsの設定で、Multiphase flowラジオボタンを選択します。
  3. Multifluid typeをBidirectional EDEM Couplingに変更します。
  4. Time step sizeを0.001に、Final timeを0.5にそれぞれ設定します。Turbulence modelにSpalart-Allmarasを選択します。
  5. Pressure scaleをAbsoluteに設定します。
  6. Heat transferをアクティブにし、 Temperature scaleをAbsoluteに設定します。
  7. Number of passive speciesを1に設定します。

    この設定は、質量変換機能を有効にするために必要です。蒸発した水分は、種輸送方程式を使用して追跡されます。



    図 23.
  8. Solver controls設定をクリックします。MinimumおよびMaximum stagger iterationsをそれぞれ22に設定します。


    図 24.
  9. ダイアログを閉じてモデルを保存します。

材料プロパティの割り当て

  1. 流れリボンから 材料ツールをクリックします。


    図 25.
  2. 材料としてAir-EDEM Particle - 2wayが割り当てられているのを確認します。
    割り当てられていない場合は、ボックス形状をクリックして、マクロダイアログからAir-EDEM Particle – 2wayを選択します。
  3. ガイドバーをクリックしてツールを終了します。

    ボックスの壁に断熱条件を適用しているので、熱境界条件を明示的に設定する必要はありません。

メッシュの生成

  1. メッシュリボンから Volumeツールをクリックします。


    図 26.
    Meshing Operations ダイアログが開きます。
  2. Mesh sizeをAverage sizeに設定し、Maximum element sizeを0.005に変更します。
  3. Curvature-based surface refinementを非アクティブにして、Meshをクリックします。


    図 27.
  4. メッシングプロセスの完了後、モデルを保存します。

節点出力の定義

メッシングが終了すると、自動的にソリューションリボンに移動します。

  1. ソリューションリボンから フィールドツールをクリックします。


    図 28.
    Field Outputダイアログが開きます。
  2. Write initial conditionsチェックボックスをアクティブにします。
  3. Write results at time step intervalチェックボックスをオフにします。
  4. Write results at time intervalチェックボックスをアクティブにします。
  5. Time step intervalを0.01に設定します。


    図 29.
  6. ダイアログを閉じてモデルを保存します。

連成シミュレーションの実行

  1. EDEMCoupling Serverをクリックして、連成サーバーを起動します。


    図 30.
    連成サーバーがアクティブになると、アイコンが変化します。


    図 31.
  2. HyperMesh CFDに戻ります。
  3. ソリューションリボンから 実行ツールをクリックします。


    図 32.
    Launch AcuSolveダイアログが開きます。
  4. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  5. Number of processorsを6に設定します。
  6. Default initial conditionsを拡張表示し、Pre-compute flowを非選択にし、velocity valuesを0に設定します。Pre-compute Turbulenceのチェックをオフにします。
  7. Temperatureを363Kに設定します。
  8. RunをクリックしてAcuSolveを起動します。


    図 33.
    AcuSolveシミュレーションを起動すると、EDEMとのサーバーに接続します。ベースの接触モデルが設定されていないことを示す警告メッセージが表示されます。Ignoreをクリックします。タブレット粒子は互いに接触しておらず、形状とも接触していないので、接触モデルは必要ありません。スプレーとタブレットの接触は、スプレーコーティングモデルによって処理されます。
  9. このダイアログで、AcuSolve実行を右クリックし、View log fileを選択します。
    EDEMとの連成が成功すると、その情報がログファイルに出力されます。


    図 34.
    シミュレーションが完了した後、実行時間のサマリーがログファイルの末尾に出力されます。


    図 35.

EDEMによる結果のポスト処理

  1. EDEMのシミュレーションの完了後、左上隅のをクリックして、EDEMのAnalystタブに移動します。
  2. AnalystツリーでDisplay > Geometriesの順に展開し、boxを選択します。
  3. Display ModeがFilledに設定されていることを確認し、Opacityを0.2に設定します。


    図 36.
  4. Analystツリーで、Particlesを選択してtabletをクリックします。
  5. ColoringをVolume Addedに設定します。
  6. Min ValueとMax ValueのAuto Updateチェックボックスを両方ともアクティブにします。
  7. Show Legendチェックボックスを選択します。
  8. Apply Allをクリックします。


    図 37.
  9. メニューバーで、以下をクリックすることで時間を0に設定します。


    図 38.
  10. View planeをDefaultに設定します。


    図 39.
  11. Viewerウィンドウで、Playback Speedを0.1xに設定し、をクリックして粒子流のアニメーションを再生します。


    図 40.

    タブレットがスプレーコーティングを受け取り始めると追加ボリュームが増加することを確認します。スプレーの注入が停止すると、コーティングが乾燥し始めるので、追加ボリュームが徐々に減少します。

要約

このチュートリアルでは、質量変換による基本的なAcuSolve-EDEMの双方向(二方向)連成の問題を設定し、実行する方法を知ることができました。特定の位置と内部間隔で粒子を作成する方法を学習し、スプレーの注入を定義する方法も学習しました。シミュレーションが完了した後は、結果を処理して、時間の経過に伴うコーティングの変化が表示されるようにしました。