初期応力線形解析

初期荷重または初期応力線形解析は事前の荷重を受けた構造のあらゆるタイプの構造線形解析を指します(プレローディングまたはプレストレッシングとも呼ばれます)。

構造の応答は初期状態の影響を受け、この初期状態は、関連する解析に先立って構造に適用されるさまざまな初期荷重 / 初期応力の影響を受けます。初期応力解析の例としては、遠心力の初期荷重を受ける回転翼機のブレードの解析、圧縮の初期荷重を受けるピラーの様な構造、構造上のボルト初期締め付けからの初期荷重の解析などを含みます。OptiStructでは、こうした初期荷重または初期応力の効果を考慮に入れることができます。

サポートされている初期応力 / 初期荷重荷重ケース
  • 線形静解析
  • 非線形準-静的荷重ケース(小変位および大変位非線形荷重ケース)
初期応力 / 初期荷重線形解析荷重ケース

線形静解析、ノーマルモード解析、複素固有値解析、直接法による周波数応答解析、モーダル法による周波数応答解析、直接法による過渡応答解析およびモーダル法による過渡解析。区分モード合成(CMSMETH)サブケースの初期荷重もサポートされています。

それ以外のサポートされていないサブケース内のプレロードが指定されると、それに応じたユーザーエラーが生成されます。初期応力はSTATSUB(PRELOAD)ケースコントロールカードを通して指定され、初期荷重静荷重ケースIDを参照します。ネストされた初期荷重はサポートされていないため、ユーザーエラーが生成されます(つまり、サブケースCにサブケースBからの初期荷重があり、そのサブケースBにサブケースAからの初期荷重がある場合、ユーザーエラーが出力されます)。

初期応力の効果と初期応力が付与された剛性マトリックス

初期応力の効果を考慮するために、初期応力線形解析では、初期応力が付与された剛性マトリックス K ¯ が、事前の荷重を受けていない構造の元の剛性マトリックス K に代わって使用されます。

初期応力サブケースが線形静的サブケースである際、初期応力は、初期荷重静的サブケースの応力に基づいた幾何剛性マトリックス K σ MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aqatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaaC4samaaBa aaleaacqaHdpWCaeqaaaaa@38BA@ によって捕捉または定義されます。この幾何剛性マトリックスは、元の剛性マトリックス K で拡張され、初期応力が付与された剛性マトリックス K ¯ を形成します。(1) K ¯ = K + K σ
初期荷重条件によっては、結果的に構造が弱体化または剛化する可能性があります。
  • 初期荷重が圧縮の場合、典型的には構造を弱くする効果を持ちます(例:圧縮のプ初期荷重を受けるカラムまたはピラー)。
  • 初期荷重が引張りの場合、典型的には構造を硬くする効果を持ちます(例: 遠心力の初期荷重を受ける回転翼機のブレード)。
注: 要素CELAS1、CELAS2、CMASS1、CMASS2、CONM1、CONM2、CBUSH、CVISC、CDAMP1、CDAMP2、CGAP、CGAPG、PLOTEL、CWELD、CSEAM、CFAST、JOINTGは、幾何剛性マトリックス K σ MathType@MTEF@5@5@+= feaahqart1ev3aqatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaaC4samaaBa aaleaacqaHdpWCaeqaaaaa@38B7@ に寄与しません。
初期応力荷重ケースが非線形準-静的サブケースである際、初期応力が付与された剛性マトリックス K ¯ は、幾何剛性マトリックス K σ MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aqatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaaC4samaaBa aaleaacqaHdpWCaeqaaaaa@38BA@ を含むだけでなく、以下による K の変化も考慮します。
  • 収束した接触状態
  • 瞬間的な弾性プロパティ
  • 遠心荷重からのスピン軟化効果
  • 圧力やその他の追従荷重からの荷重剛性効果

これらは、初期応力を与える荷重ケースから初期応力が与えられる荷重ケースに引き継がれます。初期応力を与える荷重ケースがLGDISP準静的サブケースの場合は、 K ¯ が変形後のコンフィギュレーションに基づいて計算されます。そうでない場合は、初期コンフィギュレーションに基づいて計算されます。

微小変位NLSTAT解析で初期荷重がかけられた線形解析の剛性計算は、PARAM, KSMNL4PLを介して制御できます。

初期応力線形解析実行の場合は、追加オプションのCNTLCKサブケース情報エントリを使用し、接触圧力値に基づいて接触の開閉状態を制御できます。初期荷重非線形静解析サブケースでは、(CNTLCKバルクデータエントリを参照する)CNTLCKサブケース情報エントリを指定する必要があります。

初期応力線形解析のタイプ

以下は、異なる初期応力線形解析のタイプです。

静解析

初期応力静解析は以下の方程式に支配されます。ここで f は荷重ベクトルで、 u は変位です。(2) K ¯ u=f

線形静解析が初期応力を受けることができ、初期応力を受ける非線形静解析サブケースはサポートされていません。

ノーマルモード解析

初期応力固有値解析は以下の方程式に支配されます。ここで、 M は質量マトリックス、 A は固有ベクトル、 λ は固有値です。(3) ( K ¯ λM )A=0

初期応力固有値解析は、現時点ではAMSES、AMLS、Lanczos法によってサポートされています。ただし、指定した初期荷重が最初の臨界座屈荷重よりも大きい場合、AMSES/AMLSランでは適切なエラーが出力されます。

複素固有値解析

初期応力複素固有値解析は以下の方程式に支配されます。ここで、 M は質量マトリックス、 A は固有ベクトル、 C は粘性減衰マトリックス、 C G E は要素の構造減衰係数、 α f は追加の剛性マトリックスの係数、 ω は荷重周波数、 g は全体構造減衰係数、 K f は直接マトリックス入力による追加の剛性マトリックスです。(4) [ ω 2 M+ωC+( K ¯ ( 1+ig )+i C GE + α f K f ) ]A=0

初期応力複素固有値解析のインプリメンテーションに加えて、STATSUB(BRAKE)コマンドによってブレーキ鳴き解析を実行できます。この場合は、剛性マトリックスへの摩擦の寄与が自動的に含まれます。詳細については、ユーザーズガイドブレーキ鳴き解析をご参照ください。

直接法による周波数応答解析

直接法による初期応力周波数応答解析は、以下の方程式に支配されます。ここで M は質量マトリックス、 u は複素変位ベクトル、 C G E は材料減衰マトリックス、 C は流体-構造連成のための領域マトリックスを含む粘性減衰マトリックス、 f は荷重ベクトル、 g は構造減衰係数です。(5) [ K ¯ +ig K ¯ +i C GE +iωC ω 2 M ]u=f

モーダル法による周波数応答解析

モーダル法による初期応力周波数応答解析は、以下の方程式に支配されます。ここで、 M は質量マトリックス、 u は複素変位ベクトル、 d はその対応するモーダル値、 C G E は粘性減衰マトリックス、 C は流体-構造連成のための領域マトリックスを含む粘性減衰マトリックス、 A はノーマルモードおよび剰余ベクトルを含むセット固有値ベクトル、 f は荷重ベクトル、 ω は荷重の周波数、 g は構造減衰係数です。(6) [ A T K ¯ A+ig A T K ¯ A+i A T C GE A+iω A T CA ω 2 A T MA ]d= A T f u=Ad

直接法による過渡応答解析

直接法による初期応力過渡応答解析は、以下の方程式に支配されます。ここで、 M は質量マトリックス、 u は変位ベクトル、 C は粘性減衰マトリックス(適切な方法による構造減衰を含む)、 f ( t ) は過渡荷重です。(7) M u ¨ +C u ˙ +( K ¯ )u=f(t)

モーダル法による過渡応答解析

モーダル法による初期応力過渡応答解析は、以下の方程式に支配されます。ここで M は質量マトリックス、 u は変位ベクトル、 d はその対応するモーダル値、 C は粘性減衰マトリックス(適切な方法による構造減衰を含む)、 A はノーマルモードおよび剰余ベクトルを含むセット固有値ベクトル、 f ( t ) は過渡荷重です。(8) A T MA u ¨ + A T CA u ˙ + A T K ¯ Au= A T f(t) u=Ad

区分モード合成(CMSMETH)サブケース

初期応力区分モード合成(CMS)は剛性マトリックスとして( K ¯ )を使用します。弾性体生成(マルチボディダイナミクスの入力として)およびマトリックスによる直接入力生成(外部のスーパーエレメント用)の両方について静的およびノーマルモードを計算するために、質量マトリックスや減衰マトリックス等その他はそのまま留まります。初期荷重 / 初期応力CMS解析の主な効果は、結果における周波数の変化となります。

結果

通常の構造の線形解析でサポートされている結果は対応する初期応力線形解析でも可能です。

初期応力線形解析では構造が弱くなるまたは硬くなる初期荷重効果を含んでいても、初期応力解析からの結果は初期荷重の結果を含んでいないことに注意を払うことは重要です。たとえば、初期応力線形静解析からの変位は、初期荷重の変位を含んでいません。構造の全体の変形 / 応力を得るため位には、ポストプロセッシングで初期応力線形解析の変位 / 応力を初期荷重の変位 / 応力に注意深く重ね合わせる必要があります。特に、初期応力直接周波数応答解析による複素結果のポストプロセスでは、正当なアプローチは最初に与えられた位相での複素結果を得、次に対応する初期荷重の結果を重ね合わせます。それ以外の重ね合わせのアプローチでは誤った結果をもたらします。