タイヤモデリングの概要

タイヤは、車両の路面との相互作用をモデル化するうえで重要な要素であり、一部のタイヤモデルは特定のシミュレーションドメインにより適したものとなっています。

ドメインは主として下記のカテゴリーに分類されます:
車両動解析
シミュレーションはスムーズな長波路面上を低周波の入力で実行され、ステアリング、ブレーキおよびスロットル入力への車両の応答が対象となります。
車両の乗り心地
シミュレーションはスムーズではない路面上で実行され、乗員の乗り心地が評価されます。
車両の耐久性
シミュレーションはでこぼこの路面上で実行され、ピーク荷重および / または荷重履歴を入力として使用し、車両部品の疲労寿命を予測します。
軟質土壌上の車両
シミュレーションは軟質土壌地形上で実行され、圧縮可能なサーフェス上の車両性能とタイヤが示す動的な挙動を捕捉します。
MotionSolveおよびMotionViewは、以下のタイヤモデルとのインターフェースを提供します。
  Altair Fiala CDTIRE FTIRE MF-Tyre MF-SWIFT PM Flex Tire Altair Soft Soil
Author Altair Fraunhofer Institute Cosin Scientific Software Siemens Siemens Pratt Miller Aristotle University of Thessaloniki/Altair
Model Type Enhanced Fiala 弾性リング 弾性リング Pacejka Magic Formula Pacejka Magic Formula 有限要素モデル Bekker、Wong、Janosiの経験式によるEnhanced Fiala
適用範囲 車両動解析 車両動解析

車両の乗り心地

車両の耐久性

車両動解析

車両の乗り心地

車両の耐久性

車両動解析 車両動解析

車両の乗り心地

車両の耐久性

軟質土壌上の車両 軟質土壌上の車両
ライセンス 追加のライセンスは不要 AltairまたはFraunhoferからライセンスを購入する必要あり Cosinからライセンスを購入する必要あり 追加の購入は不要 Siemensからライセンスを購入する必要あり Altair Partner Allianceプログラムにアクセスするライセンスが必要 追加のライセンスは不要
インストール 追加のインストールは不要 Altairからライセンスを購入する必要あり

追加のインストールは不要

Fraunhoferからライセンスを購入する必要あり

ライセンスサーバーとライセンスのインストールが必要

以下のインストールが必要:
  • ソフトウェア
  • ライセンスサーバー
  • ライセンス
追加のインストールは不要 以下のインストールが必要:
  • ライセンスサーバー
  • ライセンス
以下のインストールが必要: 追加のインストールは不要
タイヤデータ 物理的なタイヤテストとその後のパラメータフィッティングが必要 物理的なタイヤテストとその後のパラメータフィッティングが必要 物理的なタイヤテストとその後のパラメータフィッティングが必要 物理的なタイヤテストとその後のパラメータフィッティングが必要 物理的なタイヤテストとその後のパラメータフィッティングが必要 Tire CADおよび材料特性が必要

Altair EDEMでの土壌リプレゼンテーションが必要

タイヤの基本パラメータと軟質土壌特性評価が必要

Altair Soft Soilパラメータ(Soft Soil Tireモデル

接触のタイプ ポイントフォロワーまたは楕円カム ブラシタイプの離散化したタイヤ接地面による接触 ブッシュ要素を用いた離散化したタイヤ接地面による接触 ポイントフォロワー 楕円カムまたは剛体リング 有限要素メッシュへの離散要素法(DEM)粒子 ポイントフォロワーまたは楕円カム
路面タイプ Altair Roads(Altair路面モデリング

3D曲面標準グリッド(OpenCRG

2次元解析的および統計的路面

3D曲面標準グリッド(OpenCRG

3次元マスターおよびミクロパッチ

2次元解析的および統計的路面

3D曲面標準グリッド(OpenCRG

標準グリッド路面(RGR)

Altair Roads(Altair路面モデリング

3D曲面標準グリッド(OpenCRG

Altair Roads(Altair路面モデリング

3D曲面標準グリッド(OpenCRG

EDEMバルク材料 軟質土壌の標準グリッド路面(Soft Soil Tireモデル

3D曲面標準グリッド(OpenCRG

注: Altairは、物理的なタイヤテストとタイヤデータファイル用のパラメータフィッティングを提供していません。ただし、表に示したタイヤベンダーを含む、複数のサードパーティのタイヤテスト施設が、こうしたサービスを提供しています。

タイヤモデルの選択方法

Altair Motion Solutionsは、低周波数および高周波数範囲のタイヤモデルとのインターフェースを提供することで、車両設計および評価に必要なすべてのタイプの解析を可能にしています。タイヤモデルに必要な忠実度は、アプリケーションと捕捉する必要がある周波数範囲によって異なります。たとえば、低周波数入力による車両動解析の評価は、単一点接触で構成される低忠実度のタイヤモデルで実行できます。一方、乗り心地の解析では、ベルギーブロックなどのイレギュラーな路面による高周波数入力を捕捉する必要があるため、離散化した接触パッチによる高忠実度のタイヤモデルに依存する必要があります。実際の開発プロセスにおけるタイヤモデルのリプレゼンテーションは大きく異なり、要件の増加や特定の効果のモデリングの向上により、計算負荷が高まるだけでなく、必要なモデルパラメータの量と質も大きくなります。ほとんどの場合、モデルのパラメータセットは測定して特定する必要があり、モデルによっては、特定のタイヤ圧力と温度でのみ有効な場合もあります。ここでは、サポートされているタイヤタイプを簡単に説明します。これは次回のモデル選択の手引きとなるものです。
数学的および経験的タイヤモデル
これらのモデルでは、タイヤとリムが1つの剛体として表されており、ここではタイヤ-路面のフォースが路面上の1つの相互作用点の位置と速度によって決まります。FialaとPacejka Magic Formulaはこのアプローチに基づきますが、タイヤ力の非線形挙動の表現方法が異なります。たとえば、横方向のスリップの関数としての横力の減少特性などです。数学的および経験的タイヤモデルは、1~2 Hzの低周波数範囲で路面がスムーズだと想定される車両動解析アプリケーションで推奨されます。Fialaモデルの拡張バージョンではカム接触法が導入されており、複数ポイント接触によってタイヤがさまざまな路面障害物(穴、バンプ、カーブなど)を捕捉できるので、基本的な耐久性解析に適しています。
剛体リングタイヤモデル
剛体リングタイヤモデルはMF-SWIFTモデルによって説明されます。ここでホイールは剛体リムとして、タイヤはタイヤゴムを表すリムに弾性要素によって接続される6DOF剛体リングとして特徴付けられます。この実装により、空気タイヤの基本モードをモデル内で確認できるようになります。たとえば、リムを基準としたリングの振動などです。
弾性リングタイヤモデル
弾性リングアプローチは、FTireとCDTireによって実装されます。タイヤと路面との接触サーフェスを非常に詳細に定義することで前のモデルの上に構築する方法で、ゴムと路面間の圧力分布がもたらされます。このため、でこぼこの路面に適しており、乗り心地効果のスタディによく使用されます。タイヤ内の空気もモデル化されるので、温度効果や圧力損失の影響のシミュレーションに使用できます。このクラスのモデルは、300 Hzまでの周波数範囲に対応できます。
有限要素タイヤモデル
有限要素タイヤモデルは、リム、ゴムとクリート、ベルト生地と鋼製ネジ、タイヤ内の空気を詳細に網羅する弾性ボディとして表されます。こうしたモデルは車両シミュレーションとしては非常に複雑ですが、タイヤそのものの開発には有用です。
軟質土壌対応タイヤモデル
このクラスのタイヤモデルでは路面が剛体だと想定せず、タイヤと軟質土壌地形の相互作用をモデル化します。地形は、経験式またはDiscrete Element Method(DEM)などの離散化法で表現できます。経験式は計算コストが低いので、迅速なスタディや車両最適化に適しています。DEMを使用した軟質土壌のリプレゼンテーションでは、きめ細かい材料を使用した地形の複雑さの特徴付けが考慮されます。このため、タイヤトレッドの影響を含むより現実的な結果がもたらされ、排土効果のリプレゼンテーションが向上し、土壌形態のリプレゼンテーションも向上しますが、計算コストの価格が大きくなります。