PCD [ポイントクラウドデータ]

PCDまたはPCD路面は、三角メッシュからなる有限要素(FE)サーフェスによって表される路面です。シェル路面サーフェス、三角形化された路面サーフェス、テッセレート処理された路面サーフェスと呼ぶこともできます。このような路面タイプをMotionSolveで示すためのキーワードとしてPCD(ポイントクラウドデータ)を使用します。路面は節点データと要素データによるポイントクラウドデータを使用するか、節点のみを使用して作成できます。節点のみで作成されたPCDの場合、MotionViewHyperMeshスクリプトを使用して三角メッシュを自動的に作成します。


図 1. 少数の三角形要素がハイライトされたシェルメッシュ

路面ファイル

OptiStructフォーマットでHyperMeshからエクスポートされた.femファイルは、グラフィックスを可視化したり任意のタイプのMotionSolve Tireモデルとペアにしたりするために、MotionView Road Toolsで直接使用できます。この場合、単位はMotionViewモデルで定義されているものが使用されます。このファイルを.rdfファイル形式で使用し、路面サーフェスデータを節点および要素として直接取り込むこともできます。または、.rdfファイルで.femファイルを他の情報(単位、手法、摩擦係数MU、ブロックパラメータなど)と一緒に参照することもできます。

.rdfフォーマットのパラメータは以下のとおりです:
  1. Unitsブロック
  2. 以下を記述したMODELブロック:
    1. Methodとして3D

      および

    2. ROAD_TypeとしてPCD
  3. 以下の内容を含むオプションのPARAMETERSブロック:
    1. SEARCH_TRIAS ➔ 三角形検索方法を設定するオプション。
      1. True(デフォルト): 三角形が使用可能な場合に使用します。
      2. False: 最も近い3つの節点を収集し、要素を補間して作成します。

      このオプションについては次のセクションで詳しく説明します。

    2. OFFSET_ X ➔ 原点のX座標 - デフォルトは0。
    3. OFFSET_ Y ➔ 原点のY座標 - デフォルトは0。
    4. OFFSET_ Z ➔ 原点のZ座標 - デフォルトは0。
    5. HT_INTERPOLATION ➔ 接触パッチにおける高さを求めるために使用する補間手法。使用可能な手法はBarycentric(デフォルト)またはLinearの2つです。
    6. BEYOND_BB_Z ➔ 路面の境界ボックス外部で使用する高さ - デフォルトは0。
    7. ROTATION_ANGLE_XY_PLANE ➔ 路面参照マーカー上で路面を回転するのに使用できる - デフォルトは0。
  4. NODESデータとELEMENTSデータ
HT_INTERPOLATION:接触点における高さを求めるために使用する検索手法。SEARCH_TRIASオプションに応じて、節点のみまたは要素と節点による補間方法が選択されます。次の表に使用可能なオプションを示します:
検索方法 補間方法
  Linear Barycentric
節点 最も近くにある3つのエンティティの平均高さ 最も近くにある3つの節点の高さを、それぞれの距離に基づいて加重平均した値。
要素 要素を囲んでいる要素を構成する節点のBaycentric重み付け。


図 2. .rdfファイル例

タイヤが路面の最大境界ボックス内部にはあるものの、路面パッチの外にある場合は、それより前に認識されていた高さが使用されます。

検索方法

検索方法には2つの選択肢があります:
  1. NODESとELEMENTS
  2. NODESのみ
1.節点と要素
路面データは、節点データと要素データで用意されます。このデータは次の2つの方法で得ることができます。
  1. 路面データと同じ.rdfファイルによるテーブル。
  2. NODESとELEMENTデータを収めたファイル。
テーブル
NODESテーブルは4つの列で構成されています。1列目は、節点番号/節点カウント。節点は頂点です。2列目、3列目、4列目は、三角形要素を構成する頂点のx座標、y座標、z座標です。
図 3. 節点のテーブル
ELEMENTSテーブルは4つの列で構成されています。1列目、2列目、3列目は、三角形要素を構成する頂点の節点IDです。4列目は、特定の要素の摩擦係数です(現在のところ、この情報はタイヤに渡されません)。
図 4. 要素のテーブル
NODESとELEMENTSを収めたファイル
このファイルは、下の図に示すように“Free format Export”を選択して、HyperMeshからOptiStruct.femファイルとしてエクスポートする必要があります:
図 5. 節点と要素のデータをエクスポートするためのHyperMeshの設定
次のようなデータを収めた.femファイルがエクスポートされます。
図 6. HyperMeshからOptiStructのフォーマットでエクスポートした節点と要素のデータ
2.NODESのみ
要素データや結合データを使用せずに路面高さを補間することもできます。ファイルに結合データがない場合は、節点のみを使用する検索方法が自動的に選択されます。接続データがあっても使用しないことを望む場合は、[PARAMETERS]ブロックでSEARCH_TRIAS=FALSEキーワードを使用すれば、節点のみによる検索方法とすることができます。

この方法では、タイヤの接地点に最も近い3つの点を取得することで路面高さを補間できます。この3点は、仮想的な三角形要素の頂点として機能します。このプロセスの残りの手順は、要素に基づく路面高さの補間と同様です。

用途

両方の検索方法にはそれぞれ独自の利点があります。その利点を考慮して、使用する検索方法を判断する必要があります。NODES and ELEMENTSNODES onlyのどちらにするかという判断には、次の情報が有用です。

要素に基づく路面高さ補間の利点(NODES and ELEMENTS):
  1. メッシュで表現したフィーチャーを制御することにより、目的とする最終的な路面を制御できます。
    図 7. 路面高さの補間方式

    上の図は路面の断面を示しています。CPは、平坦なサーフェス上に配置した、タイヤの接地点です。P1、P2、P3、P4は、路面の4つの点です。CPに最も近い3点を考慮して路面高さが補間されます。P1とP2の間にCPがあれば、P1、P2、P3を考慮して路面高さが補間されます。P2とP3の間にCPがあれば、P2、P3、P4を使用して路面高さが計算されます。メッシュを制御することで、路面高さ補間の精度も向上し、それによって路面の表現も詳細化できます。

  2. メッシュを作成することで、メッシュ要素の数を制御できます。検索対象とする要素の数を削減する際にこの制御が効果的です。今後参照するために、要素をキャッシュに収めておくこともできます。これはCPUの演算時間を短縮するうえで効果的です。点の場合は、要素がないため、容易に参照できるデータがありません。
  3. 数値近似に起因してシミュレーションのたびにタイヤの位置がわずかに移動しても、再現性が確保されます。この移動位置が要素の範囲内にあれば、出力値は変化しません。ただし、点のみを使用した方法ではこの再現性を保証できません。たとえば、新しい路面ポイントが近くになれば、検索方法がこの新しいポイントを使用することになり、補間後の高さが前のシミュレーションと異なるからです。
それでも、以下の場合はNODES onlyを使用した路面高さ補間が必要になります:
  1. 車両のシミュレーションに関する概念を得るために、近似した結果で十分な場合。
  2. 三角形メッシュの作成と取得が不可能な場合。

ベストプラクティス

三角形化された路面を最大限に活用するには、以下を実行することをお勧めします。
  1. HyperMeshで路面を表現するには、三角形要素のみを作成します。
  2. サーフェスまたは要素の作成を支援するために作成した一時的な節点は、すべて削除します。
  3. .femファイルをエクスポートする前に、節点と要素をリナンバリングします。
  4. MotionSolveのイベントシミュレーションの実行中にタイヤの静的均衡を確保するため、路面の開始点で平坦サーフェスを作成することをお勧めします。
  5. 形状の曲率を捕捉するには小さい要素を使用し、要素の総数を減らすために平坦なサーフェス上では大きい要素を使用します。


    図 8. 平坦なサーフェスに使用する大きい要素と、曲率を捕捉するための小さい要素
  6. x/y座標が同じ位置に複数の節点が存在する場合、正確に垂直な要素をその座標位置に配置しないようにします。代わりに、最下部の節点と最上部の節点の位置に、0.001mのようなわずかな差異を設定するようにします。


    図 9. 上記のような正確に垂直な要素を設定しない