クローラ・履帯の作成

クローラ・履帯の作成ダイアログを使用して、転動体システムで履板、チェーン、ベルトをラップします。下の図は、クローラ・履帯の作成ダイアログを示しています。


図 1. クローラ・履帯の作成ダイアログ

ラップのタイプ

異なるタイプのラップを作成するために、Track/ChainまたはBeltオプションを使用できます。ラップのタイプは、適用される接触に応じて異なります。CAD/H3D graphicsオプションを使用しない場合、Track/Chainでは、スプロケットとトラックの間は球-球の接触を、他のエンティティと履板の間は球-ボックスの接触を使用します。ベルトでは、すべてのエンティティとベルトの間に球-球の接触を使用します。

転動体システムのラップ

クローラ・履帯の作成には、最低でも2つの転動体システムが必要です。Total number of Entitiesオプションを使用して、クローラ・履帯に転動体システムを追加できます。エンティティの数を定義した後、時計回りの方向(正のY方向)で転動体システムを選択する必要があります。下の図に示すように、ラップタイプは転動体システムの内側または外側にできます。


図 2. 転動体システムのクローラ・履帯のラップ

必要なデータが入力されると、ダイアログにラップシステムのプレビューが自動的に表示されます。入力されたデータに問題がある場合、プレビューエリアの下部にエラーメッセージが表示されます。カテナリ曲線は、最低必要量以上のリンクが存在する場合に含まれます。逆に、リンクの数が最小数より少ない場合、履板が開きます。その場合、シミュレーション時にギャップを閉じるために、最初のリンクと最後のリンクをつなぐフレキシブルな剛性エンティティが作成されます。これは、シミュレーションを開始すると同時に履板に引張荷重がかかるため、設計上好ましいとされています。

クローラ・履帯のプロパティ

Track/Chainタイプを使用する場合、2つのクローラ・履帯リンクオプション(Single PinとDouble Pin)を使用できます。Single Pinでは、クローラ・履帯リンクは1本のピンを使用して相互接続します。Double Pinでは、クローラ・履帯リンクはコネクターリンクにピンで固定されます。次の図は、Single PinとDouble Pinのクローラ・履帯リンクを示しています。


図 3. クローラ・履帯リンクのオプション
デフォルトでは、履板とベルトは、プリミティブなジオメトリの組み合わせで表現されます。Use CAD/H3D graphics for linksオプションにより、履板またはベルトのすべてのエンティティのCADまたはH3Dファイルを使用できるようになります。質量および慣性のプロパティは、CADグラフィックスから計算されます。CADまたはH3Dファイルはリンクまたはコネクターボディの中心に配置されるので、クローラ・履帯システムに含める前に、CADグラフィックスの中心がグローバル原点(XYZ座標の0,0,0)に配置されているのを確認することが重要です。


図 4. CAD / H3Dグラフィックスの配置

Use CAD/H3D graphics for contactsオプションにより、クローラ・履帯リンクのCADまたはH3Dファイルを使用して、剛体土壌接触と相互作用できるようになります。ユーザー定義の質量と慣性は User mass, inertia for linksオプションを使用して入力できます。この場合、ラップシステムのデータセット内でクローラ・履帯リンクのプロパティを編集できます。

ベルトまたは履板のリンクは、横方向の動きを防ぐために互いに拘束されています。拘束の種類は、アプリケーションの要件に基づいて、Link DOFを使用して変更できます。リンク間の接続の詳細を下の表に示します。
リンクDOF (自由度) 結合 横方向の拘束 サポートされる形状オプション
1 - 回転自由 すべてのリンクに回転ジョイント、最初のリンクと最後のリンクの間にインラインジョイントを適用。 Planar プリミティブとCAD
1 - 回転と曲げ剛性 すべてのリンクに回転ジョイント、最初のリンクと最後のリンクの間にインラインジョイントを適用。回転剛性と曲げ予荷重は、すべてのリンク間でサポートされます。 Planar プリミティブとCAD
2 - 引張と曲げ剛性 すべてのリンクに平面ジョイントと面内プリミティブジョイントを適用。すべてのリンク間の回転剛性と曲げ予荷重に加えて、引張剛性と引張予荷重にも対応しています。 Planar プリミティブとCAD
6 - 全方向の剛性 全リンク間の引張剛性と引張予荷重。このオプションは、回転、横方向、せん断、ねじり、横方向の曲げ剛性に加えて、すべてのリンク間の予荷重をサポートします。 None CADのみ
リンクDOFのオプションの選択に基づいて、次の図に示すようにブッシュのプロパティが有効になります。


図 5. リンクDOFが「6 - 全方向の剛性」のブッシュのプロパティ

Soil Interaction

クローラ・履帯ビルダーでは、次の2種類の土壌相互作用が提供されます。
  • Soft Soil
  • Rigid Contact
土壌相互作用は不要な場合はオフにできます。たとえば、チェーンドライブや土壌を離散要素で表したAltair EDEMとシミュレーションする場合です。
Soft Soil
AltairのSoft Soil Trackモデルは、粘土質、乾燥砂、表土、氷で覆われた雪面などの圧縮可能なサーフェス上で履帯システムが示す動的な挙動をシミュレートする方法を提供します。詳細については、Soft Soil Trackモデルをご参照ください。

MotionViewでは、クローラ・履帯と土壌の接触の式を記述した各クローラ・履帯リンクの中心に、フォースエンティティが作成されます。クローラ・履帯のプロパティで定義されたパラメータが土壌相互作用の計算に使用されます。クローラ・履帯リンクの形状によっては、リンク形状の更新に示すようにクローラ・履帯リンク形状を更新する必要があります。

軟質土壌相互作用オプションを選択した場合、Soil Terrain fileおよびSoil Reference Markerプロパティが表示されます。


図 6. 軟質土壌相互作用のダイアログ

Soil Terrainファイルには、軟質土壌とクローラ・履帯の土壌のパラメータを記述した軟質土壌路面モデルが必要です。すぐに使用できるさまざまな土壌の路面データファイルを収めた軟質土壌路面ライブラリは、インストール環境(<Installation>\hwdesktop\hw\mdl\autoentities\properties\Tires\ALTAIR_SOFTSOIL)にあります。軟質土壌路面モデルの構築方法の詳細については、路面モデリングをご参照ください。

Soil Reference Markerでは、土壌の原点を配置するマーカーエンティティを設定する必要があります。

Rigid Contact
剛体接触の土壌相互作用では、Terrain Graphics Filesで指定されたクローラ・履帯形状と路面形状の間でMotionSolveの3D剛体接触法を使用して、クローラ・履帯と路面のダイナミクスを捕捉します。


図 7. 剛体接触の土壌相互作用のダイアログ

Terrain Graphicsファイルには、接触のモデリングに関するMotionViewMotionSolveの推奨事項に従ってCADまたはH3Dグラフィックスが必要です。詳細については、ContactsおよびMotionSolveで3D接触モデルを実行するための最良の方法をご参照ください。

接触摩擦パラメータのStatic and Dynamic frictionStiction transient velocityFriction transition velocityは、剛体接触の土壌相互作用オプションで変更できます。垂直抗力接触パラメータは、Contact Propertiesセクションで指定します。

クローラ・履帯システムの作成後は、ラップシステムのデータセット内ですべてのパラメータを変更できます。

Contact Properties

クローラ・履帯システムの接触プロパティは、Belt contact properties (Impact)セクションで指定できます。これらのパラメータは、プリミティブまたはCADグラフィックスを使用するクローラ・履帯リンクとローラー間の接触に適用され、クローラ・履帯リンクと剛体接触の土壌相互作用の間の接触にも適用されます。剛体接触の土壌相互作用では、Soil Interactionセクションで指定された摩擦パラメータが考慮されます。


図 8. 接触プロパティのダイアログ

クローラ・履帯システムの作成後は、ラップシステムのデータセット内ですべてのパラメータを変更できます。