初期プライ破壊手法

Panel_compositeコンフィグには、一連のさまざまな複合積層材の初期プライ破壊基準値が付属しています。これらの破壊基準はすべて、“First_Ply_Failure”という単一の評価メソッド内にまとめられています。このメソッドは、内部で以前のESACOMPエンジンを呼び出します。

このメソッドはPanel_compositeコンフィグで使用できますが、要素ごとに破壊基準を評価します。前述のとおり、指定のdesignpointに割り当てられた構造プロパティがユーザー定義のプロパティ(PCOMPまたはPCOMPG)を参照している場合、そのメソッドで必要なすべての属性はこのプロパティから照会されます。そうでない場合は、要素のプロパティごとに直接参照されます(PCOMP、PCOMPG、PCOMPPプロパティおよびMAT1、MAT8カードがサポートされています)。

使用される参照積層材プロパティに基づいて、すべての複合材の応力は、シェル要素の力とモーメントから再計算されます。結果ファイルには、シェル要素の合力と合モーメントが含まれている必要があります。

Math

シェル要素の合力と合モーメント(F/M/Q)が結果ファイルから読み取られ、モデルに基づいて材料方向の座標系に変換されます。モーメントの符号変換は、[1]で使用される表記に従います。合力と合モーメントは、積層材の形状的な中央面に移動されます。プライベースのモデルの場合、ローカルなゾーン積層材が自動的に作成されます。ひずみと応力は、従来の積層理論を使用して、各レイヤーの3つの回復面で解決されます。面外せん断応力は、必要に応じて[2]に基づいて決定されます。単一または複数の荷重ケースを伴う選択された設計基準と材料の組み合わせについて、初期プライ破壊ベースの解析が実行されます。必要な強度許容値については、次の表をご参照ください。


図 1. 基準ごとに必要な許容値

等方性材料の+ Max stressではXt、Xc、Sが必要であり、面外せん断が考慮されます。

HMメタデータ値
  • R= Transverse_Shear_Allowable_S13
  • Q= Transverse_Shear_Allowable_S23
  • *E3

太字の設計基準は、自動的に面外せん断応力を考慮します。

RとQ(MAT8の場合)が定義されている場合、従来の面内基準も面外せん断を考慮します。

用語

余裕係数は、破壊が始まるまでのマージンを表す尺度です。有効荷重に余裕係数を掛けると、設計マージンが得られます。したがって、1より大きい余裕係数値は正の設計マージンを表し、1より小さい余裕係数値は負の設計マージンを表します。余裕係数の値は常にゼロより大きくなります。安全係数という用語は、余裕係数 / 逆余裕係数 / 破壊指数と共に使用されます。これは、余裕係数の逆数として決定されます。

線形基準(最大ひずみ、最大応力、最大繊維応力)では、これは破壊関数fの値と等しくなります。

安全マージン = 余裕係数 – 1

破壊理論のアクティベート

First_Ply_Failureメソッドがdesignpointsetに追加されたら、ブラウザからこれを編集できます。まず、結果レベル(Element | Layer | Recovery plane)を選択してから、評価するマージンのタイプを選択できます。

使用可能な破壊理論は、図 1の説明のとおりに、エンティティエディター内でカテゴリ別にグループ化されます。破壊評価に使用する材料を指定して、目的のメソッドをアクティブにします(図 2)。図 1に示したように、すべての破壊理論では、参照される材料エンティティ内で許容値が直接設定される必要があります。これらの許容値がソルバーカード(MAT1/MAT8属性)として直接使用可能になるたびに、これらの許容値は材料カードから照会されます。ソルバーデックから得られない追加の許容値は、HyperMesh内で参照される材料エンティティに付加されたメタデータとして自動的に作成されます。メタデータは、各材料のエンティティエディターで編集できます。メタデータがすでに存在する場合、これは上書きされません。メタデータは、モデルと共にHyperMeshのバイナリファイルに格納されます。


図 2. メタデータとしての初期プライ破壊の選択と許容値

例1:ローカルポスト処理

コーナーで支持されている均一に圧力荷重がかけられた厚肉のクロスプライ積層板[13]。このチュートリアルは、最大ひずみと面外せん断という2つの設計基準を使用した、4つの特定の要素のポスト処理をハイライトしています。面外せん断では、HyperMeshメタデータとして導入される、面外せん断方向での追加の強度許容値が必要です。


図 3.

例2:グローバルポスト処理

内部圧力がかけられたフィラメント巻き複合材圧力容器(CPV)。CPVには7つのらせん状のGFRPレイヤーペアと1つの周方向のCFRPレイヤーペアが巻かれています。CPVのFPF結果が、最大ひずみ基準を使用して、要素のレベルおよびレイヤーで表されています。比較のために、Yamada-Sun基準ベースの結果が要素レベルで表されています。最後に、CFRP材料に対してのみ、最大繊維応力基準を使用して、後処理が実行されます。


図 4.

初期プライの手法に関するリファレンス

  1. Mechanics of Composite Materials, Jones, R.M., Hemisphere, New York, 1975.
  2. Improved transverse shear stresses in composite finite elements based on first order shear deformation theory, R. Rolfes, K. Rohwer, International Journal for Numerical Methods in Engineering, 40:51–60, 1997.
  3. Failure criteria for an individual layer of a fiber reinforced composite laminate under in-plane loading.ESDU 83014, Amendment A. Engineering Sciences Data Unit, London, 1983/1986.
  4. Structural Materials Handbook, Volume 1 - Polymer Composites.ESA PSS-03-203, Issue 1.ESA Publications Division, ESTEC, Noordwijk, 1994.
  5. Introduction to Composite Materials.Technomic, Tsai, S.W. and Hahn, H.T., Westport, CT, 1980.
  6. Theory of Composite Design, Think Composites, Tsai, S.W., Dayton, OH, 1992.
  7. A Study of Failure Criteria of Fibrous Composite Materials, Paris F., George Washington University, Langley Research Center, Hampton, Virginia, NASA/CR-2001-210661.
  8. Failure Criteria for Unidirectional Fiber Composites, Hashin, Z., Journal of Applied Mechanics, 47 (1980), pp. 329-334.
  9. Failure criteria for non-metallic materials, Implementation of Puck´s failure criterion in ESAComp, FAIL-HPS-TN-003, European Agency Contract Report No. 16162/02/NL/CP, Braunschweig, 2004.
  10. Progressive failure analysis of advanced composites, Camanho P., NASA FA8655-06-1-3072, June 2009.
  11. Advanced Material Models for the Creep Behaviour of Polymer Hard Foams; Latest Advancements of Applied Composite Technology, Roth, M. A., Kraatz, A., Moneke, M., Kolupaev, V., Proceedings 2006 of the SAMPE Europe, 27th International Conference, Paris EXPO, Porte de Versailles, Paris, France, 27th - 29th March 2006.ISBN 3-99522677-2-4. pp. 253 - 2258.
  12. Manual for Structural Stability Analysis of Sandwich Plates and Shells, Sullins, R.T. et al, NASA CR-1457.1969.
  13. A higher-order plate element for accurate prediction of interlaminar stresses in laminated composite plates, Ramesh S.S., Wang C.M., Reddy J.N. and Ang K.K., Composite Structures 91 (2009) 337–357.