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RD-E:1101 弾塑性材料則の特性化

この例題の目的は、弾塑性材料のモデル化に最も一般的に用いられているRadioss材料則の特性化と検証の方法を紹介することにあります。

“工学”または“真”の応力-ひずみ曲線の使用が提示されます。実験結果により近づけるための破断モデルも紹介します。

使用されるオプションとキーワード

  • シェル要素
  • 等方性弾塑性Johnson-Cook材料(/MAT/LAW2 (PLAS_JOHNS)
  • 等方性弾塑性材料(/MAT/LAW36 (PLAS_TAB)
  • ネッキングポイント、最大応力、および破断の条件
  • 境界条件(/BCS
  • 強制速度(/IMPVEL
  • 材料定義(材料
  • 移動フレーム(/FRAME/MOV
  • 節点時間ステップ(/DT/NODA/CST
  • H3Dアニメーション出力(H3D出力
  • 実験結果(DP600鋼、1

入力ファイル

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モデル概要

試験体に引張力が作用します。標準化されている“ドッグボーン”試験体には、断面積A0が規定されています。特性の評価対象とする材料はDP600鋼です。1 試験体の右端に速度が適用されます。

単位: mm、ms、Kg、N、GPa

rad_ex_fig_11-1
図 1. 標準化されている引張試験体の形状. 断面積は規定値

この試験体の材料は、Johnson-Cookモデル(/MAT/LAW2)で再現できる等方性弾塑性挙動を示します。表形式材料則(/MAT/LAW36)も検討されます。

この試験体のモデルを、図 2に示すように、4節点のシェルと3節点のシェルでメッシュ化します。平均の要素サイズは約2mmです。

このシェルのプロパティには、試験に適した値にする板厚部分を除き、以下の推奨のベストプラクティス設定を使用します。
  • 板厚上の5つの積分点
  • QEPHシェル定式化(Ishell = 24
  • 平面応力のための反復塑性(Newton-Raphson法; Iplas = 1
  • 応力計算に板厚変化を考慮(Ithick = 1
  • 初期板厚は2.5mmの一定値

境界条件

試験体の左端は、6方向の自由度(3方向の並進自由度と3方向の回転自由度)のすべてで固定されています。右端はX方向の並進のみが自由で、他の5方向の自由度はすべて固定されています。X方向に-1.0m/sの速度を、この剛体のメイン節点(図 2に示した点)に適用し、低速で試験体の伸張量が均一に増加するようにします。


図 2. 引張試験体に適用するすべての境界条件

80mm離れた2つの測定節点(図 3)を選択し、シミュレーションで試料の測定部分に発生するΔlの変化を継続的に測定し、試料のひずみεeを求めます。

工学応力(公称応力)を次の式から求めます。(1) σe= FA0 ここで、
F
測定に使用した力
A0
変形前の試料の断面積
工学応力の合計値を次の式から求めます。(2) εe= Δll0 ここで、
Δl
2つの測定点間長さの変化量
l0
測定部分の初期長さ


図 3. 80mm離れた測定節点
真ひずみを次の関係式から求めます。(3) εtr=1n(1+Δl/l0)
上記により、工学ひずみと真ひずみとの間には次の式が成り立ちます。(4) εtr=1n(1+εe)
真応力は、力を真の変形後の断面で割ることにより測定できます:(5) σtr= FA
したがって、真応力を計算するには断面積を考慮する必要があります。ポアソン比を0.5と仮定すると、塑性変形の間の単軸引張における真の断面積は次の式で求められます。(6) A= A0×exp(εtr)
したがって、真応力公称応力の間の関係式は:(7) σtr= σe×exp(εtr)


図 4. DP600鋼試験体の引張試験で得られた実験結果

材料則の特性化

材料則の特性化には2つのステップがあります。

工学応力工学ひずみ曲線から、真応力真ひずみ曲線への変換(このステップはあらゆる弾塑性材料則に適用されます)。

真応力対真ひずみの曲線から主なパラメーターを取り出し、材料則を定義(Johnson-Cook則と/MAT/LAW2のための材料係数、または/MAT/LAW36のための降伏曲線)。

設計が早期段階であるなどの理由で材料試験データがない場合は、降伏応力、引張強度(UTS、工学応力値)、およびUTSにおける工学ひずみの各値を用意し、Iflag = 1を使用して/MAT/LAW2を特性化する必要があります。

この特性化は、/MAT/LAW2(Johnson-Cook弾塑性)と/MAT/LAW36(表形式弾塑性)を対象として実施します。それぞれの材料則で、降伏応力とヤング率は曲線から決められます。

塑性ひずみは次のように定義できます:(8) εpl= εtrσtrE 
曲線で特性化される重要なポイントはネッキングポイントで、力対変位の曲線の勾配が0になり、以下の関係式が与えられます:(9) σtrεtrσtrFδ=0

rad_ex_fig_11-8
図 5. 引張試験の図式. (0~1: 弾性領域、1: 降伏点、2: ネッキングポイント、3a: 破断、3b: 線形弾性緩和)
表 1. 解析に用いられた式
材料特性 一般的な式
公称応力 σe= FA0
工学ひずみ εe=Δll0
真応力 σtr= σeexp(εtr)
真ひずみ εtr=1n(1+εe)
真ひずみ速度 ˙εpl=ΔεplΔt

結果

/MAT/LAW2: Johnson-Cookモデルを使用した弾塑性材料則

応力塑性ひずみ則は次のとおりです。(10) σtr= a+bεpln ここで、
a
実験で得られた曲線から読み取った降伏応力
b および n
材料パラメータ

材料パラメータbnがない場合、Radiossでは/MAT/LAW2Iflag = 1を使用できます。この場合は、UTS(引張強度。工学値)およびUTSにおける工学ひずみを入力します。多くの場合、これらの値は文献や材料供給元からオンラインで入手できます。つづいて、式 10に使用するパラメータbnRadiossで計算します。

通常は、実試験による応力ひずみ曲線が存在すれば、その試験データを/MAT/LAW36 (PLAS_TAB)に使用します。しかし、この例題では、試験から得られる曲線がないと仮定し、Iflag = 1を指定した/MAT/LAW2を使用して、簡素化したデータ入力からどの程度実試験データに近い結果が得られるかを確認します。
データ
降伏応力
0.3 GPa
UTS
0.686 GPa
UTSにおけるひずみ(E_UTS)
0.129 (12.9%)

シミュレーションでは要素の真応力と真ひずみが算出されるので、その結果から工学応力工学ひずみ曲線を計算する必要があります。試験同様に、工学応力は式 1および剛体力と試験前の断面積を使用して計算できます。工学ひずみは、式 2および2つの測定節点間距離に発生した変位と試験前の測定節点間距離を使用して計算できます。このモデルでは、節点102を原点とする局所運動座標系を使用して、節点102の変位を基準とする節点616の変位を測定します。これにより、2つの節点間の変位を節点616の変位として出力できます。

応力ひずみ曲線のシミュレーション結果と試験結果を比較すると、試験による曲線から読み取った最大応力値とシミュレーションで得られた最大応力値が完全に一致していることがわかります。ネッキングポイント前のシミュレーション曲線の当初挙動には、試験による曲線との相違が見られ(図 6)、応力値がわずかに高くなっています。/MAT/LAW36を使用すること、および応力ひずみ曲線の試験データを入力することで、この相違を改善できます。


図 6. /MAT/LAW2を使用した結果と試験結果の比較

/MAT/LAW36:表形式入力関数を使用した弾塑性材料則

引張試験データが手元にあるので、そのデータを材料則LAW36で使用すれば、より正確な方法になります。最初のステップは、試験データを用意し、式 4式 7を使用して真応力真ひずみ曲線を計算することです。


図 7. 真応力ひずみ曲線(実験データ)と比較した工学応力ひずみ曲線

ネッキングポイントとは、工学応力ひずみ曲線の傾斜がゼロになるポイントです。ネッキングポイント以降のすべての値は、/MAT/LAW36の材料曲線の作成に使用できないので、データから除外して無視できます。ネッキングポイント以降の値は、材料が破断するひずみよりも大きいひずみまで外挿して求める必要があります。引張強度が0.129になる工学ひずみでネッキングポイントが発生します。図 8のように、このポイントから塑性ひずみの100%の値まで、曲線をまっすぐに外挿しています。

次に、式 8を使用して真応力と真塑性ひずみとの関係を計算します。


図 8. 100%まで外挿した真応力真塑性ひずみ曲線
図 8の曲線をLAW36の入力として使用すると、図 9に示すように、降伏点からネッキングポイントまでのシミュレーション結果が、試験で得られた曲線と完全に一致します。ネッキング以降の挙動は、ネッキング以降の真ひずみ対真塑性ひずみのデータを外挿する方法に応じて異なります。


図 9. /MAT/LAW36による引張試験のシミュレーション結果と試験結果との比較

/FAIL/BIQUAD: 線形ダメージ累積による破断の、簡素化した非線形ひずみに基づく条件

弾塑性材料モデルの中には、破断時点の単一の塑性ひずみを入力して材料の破断をモデル化できるものがあります。塑性ひずみがユーザー定義の値εmaxpに達すると、要素は削除されます。

この方法の短所は、塑性ひずみが所定の値に達すると、応力の状態に関係なく要素が削除されることにあります。この方法では、引張による破断と圧縮による破断との間に違いが現れません。金属では、応力の状態が異なれば、破断時のひずみも異なることが普通です。特に、圧縮の場合、普通は引張よりも破断時のひずみがはるかに大きくなります。この制限に対処するには、材料入力で定義できる簡単な最大相当塑性ひずみの代わりに/FAIL/BIQUADを使用します。/FAIL/BIQUADでは、簡潔ないくつかの入力で、3軸方向の応力の関数として破断時の非線形塑性ひずみが作成されます。
  • /FAIL/BIQUADを使用した/MAT/LAW2
    /FAIL/BIQUADに用意されている、高張力鋼(HSS)に対するデフォルト値(M_flag =2)を使用すると、試験の前にこのシミュレーションで破断を確認できます。/FAIL/BIQUADでは、試験結果との一致度向上を図るために、破断時の単軸引張塑性ひずみの値(c3)を0.5から0.75に引き上げています。図 10 は、両方のシミュレーションの結果を示しています。


    図 10. /FAIL/BIQUADによる/MAT/LAW2を使用した引張試験のシミュレーション結果と試験結果との比較
  • /FAIL/BIQUADを使用した/MAT/LAW36
    LAW2のシミュレーションに類似した/FAIL/BIQUADでは、シミュレーションでの破断点が試験結果と一致するように、破断時の単軸引張塑性ひずみの値(c3)を0.5から0.9に引き上げています。


    図 11. /FAIL/BIQUADによる/MAT/LAW36を使用した引張試験のシミュレーション結果と試験結果との比較

まとめ

この例題の前半では、広く使用されているRadiossの各種材料則を特性化および検証する方法を紹介しました。いくつかの材料パラメータを指定した/MAT/LAW2 (PLAS_JOHNS)材料を使用し、その材料を表現しました。引張試験の実験データを指定した/MAT/LAW36 (PLAS_TAB)材料を使用し、より正確なシミュレーションを目指しました。“工学”または“真”の応力-ひずみ曲線の使用を提示しました。

引張と圧縮での破断の挙動を記述するために、線形ダメージ累積による破断の、簡素化した非線形ひずみに基づく条件(/FAIL/BIQUAD)を使用して、実験での応答との一致性を改善しました。